最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1369号 判決 1949年1月11日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人小川馨提出上告趣意前段について。
恐喝取財罪の本質は、被恐喝者の畏怖に因る瑕疵ある同意を利用する財物の領得行爲であると解すべきであるから、その領得行爲の形式が、被恐喝者において自から財物を提供した場合は勿論、被恐喝者が畏怖して默認し居るに乗じ恐喝者において財物を奪取した場合においても、亦本罪の成立を妨ぐるものではないと謂わねばならぬ。それ故本罪の正條たる刑法第二四九條第一項の「交付せしめ」との語義は以上の各場合を包含する趣旨と解するを正當とし、亦原判決事実摘示中の「交付せしめて之を喝取し」との用辭は、右刑法正條の用語例に從いたるものと解するを相當とする。左れば論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
以上の理由により刑事訴訟法施行法第二條舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。
此判決は裁判官全員一致の意見に依るものである。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)